皆さんは、部下を持ったことがあるだろうか
実は多くの人が、名前は違えど部下を持った経験があるはずである。
社会人として管理職になったなら当然のこと、アルバイトや部活の後輩、学校の下級生、弟妹、生きているだけで誰もが、望まずとも何かを教授する立場という経験が訪れる。
そんな時に陥りやすいのが部下の回答を「待てない」ということである。
待つことは非常に重要だ。
「そんな時間はない!こっちも忙しいんだ!」そう思うかもしれない。ごもっとも。私も経験がある。「○○さんはどう思うの?」と部下に問いかける。部下は「・・・えーっと・・・・」ともじもじしてなかなか話せない。さっさと次の仕事に移りたい私は「○○じゃないの!?」と、答えを示して話を終えてしまう。そして、「使えないやつ!」などと心の中で相手を罵るのである。最悪である。上司として0点だ。
しかし、考えてみれば、こちらから相手の意見を聞いているのだから、それを待つというのはこれもまた仕事なのである。特に、上司の質問なのだから、部下には答える義務が生じる。仕事を振ったのは自分なのにその答えが待てないと腹を立てるのはお門違いではないだろうか。部下からすれば、「仕事を増やしたのはお前だろ!」である。
腹が立つ原因の一つに「たったひとつの答えを用意してしまっている」ということがあげられる。訪ねた時には自分の中にすでにベストな解答が出てしまっているのだ。つまり、部下に意見を聞いておきながら、相手の意見ではなく自分の答えの答え合わせをしているのである。それは部下からすれば答えづらいに決まっている。
部下に意見を求めるならば、その意見を尊重し、その理由もしっかりと尋ねよう。
でなければ、「意見を聞かないイライラ上司」と「意見の言えないもじもじ部下」の出来上がりである。そんな組織が持続していられるほどこれからのビジネス界は甘くはないと考えたほうが良いだろう。時代は変革の時を迎えているのだ。
しっかりと意見を聞き、その理由を聞き、良いものであればしっかりと採用しよう。
部下はこれだけで自己肯定感を持つことができる。
そしてもうひとつ大切なこと。
「部下の作り上げたものを勝手に作り変えてはならない。」
これは部下への人間的侮辱だ。
こんな経験はないだろうか
「明日までに〇〇の資料つくっといて!」と上司に言われ、残業をしても終わらず、家に帰ってからもあれやこれやと一晩中考え抜き、翌朝満を持して提出!
「うーん」と、渋い顔をし、無言で資料を修正する上司。ものの数分で出来上がったものは完成度も素晴らしく、自分の物など足元にも及ばない…「さすが○○さん!尊敬!」と、思うかどうかは人それぞれとする。しかし、確実に自己肯定感は降下する。気づかぬうちにだ。すると部下はどうだろうか。「次もきっと修正される。」「自分がどんなものを作っても同じじゃないだろうか。」「上司がいいものにしてくれる」やる気を出せる環境になっていないのだ。
こんな期待をしていないだろうか。「自分の物を手本にして、良いものを作る技術を覚えてほしい。」確かにそういう師弟関係もある。しかし、それは稀なケースだと考えたほうがいい。あなたの目の前にいる部下は、人生のすべてをささげて職人に弟子入りしてきたわけではないのだから。
上司がそれを望むのは、教育を怠っているだけである。何のために会社から部下や後輩よりも高い給料をもらっているのだろうか。いまいちど考えてみよう。
「ついてこられない部下は才能がなかった。使えない部下はさっさと辞めてくれていい。」
そんなことを考えている上司がいたならば、管理職失格もいいところだ。管理職どころか社会人としてもてんで使えない。自分に0点を付けたほうがいい。
部下や後輩といった社員は、会社という組織が採用し、給与を支払って雇い、対価として労働を享受している。端的に言えば会社の物なのだ。
求人にも採用にも教育にもお金をかけている。それも想像以上のお金をかけているのだ。それを中間管理職がおいそれと見切りをつけてしまうことなどあってはならないことである。
「昔はこれでよかった。」「今の若者は根性がない」そう言って、古き良き時代に思いを馳せるのも良い。しかし、世界は変わっている。これからも変わり続けるのだ。
人の上に立ったのならば、自身も研鑽を続け、変わり続けなければ置いて行かれてしまうだろう。
そうできなかった企業の末路を皆さんもご存じのはずだ。IT化の遅れにより市場からの撤退。IT化後もセキュリティへの認識の甘さから情報流出や不正出金を起こしている。
これは、教育者目線で見てみれば、子どもの自己肯定感を育てる親の資質と似ている。
親は資質なんて関係なく親になるからいたましい事件も起きてしまう。
人間は子どもが生まれてすぐに親になるのではない。「親になっていく」のだ。
子どもの回答が遅くとも待とう。
子どもの回答が自分の思う解答と違っても褒めよう。
子どもの思うとおりにやらせてみたならば、その結果を頭から否定することをやめよう。
子どもも部下も同じだ。
その子、その人をしっかり見つめて育てよう。
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